【ギラバニアの貴公子Ⅱ】再会

北海のゲートを越え
ハイデリンではない異星の地である
フロントラインに突入してから既に3日。

大きな獲物の周囲の戦闘には付きものの
落雷の様な閃光と爆音そして巨大な黒煙。
それを目印に沢山の冒険者が群らがると蛮神ですら
すぐに溶けてしまうので無駄口をたたいている暇すら無い。

僅かでも先に獲物にありつく為に口数の多いお調子者ですら
頭のエーテル干渉計のゲージをにらみつつ索敵するのに謀殺され黙り込んでしまった。

だから暫くの間、
ここは平穏であった。

しかし、この地ではとてもカネがかかる。
食えそうなモノは地面に生えておらず
飲めるようなものも無い。
呼吸可能な大気すらないのだから当然だ。

恐らくはハイデリンと同様、
この星もテラフォーミングの真っ最中なのだろう。

幾たびかのフェーズの後、帝国とその周辺は概ね完了してはいるものの
エオルゼアなど周辺諸国は道なりに範囲を広げる拡張フェースがまだ進行中で、
それが終わるまで空を飛ぶことも赤い湖を泳ぐことも危険この上無いことだ。

海岸などを取り巻くシールドは物理的に存在する訳では無い。
LSリングを中継して得られる位置座標から体を制御するコントローラに指示を出し
手足がシールドが存在するかの様に振る舞うだけなのだ。

だから、本当のリアルなノックバック攻撃でも受けて海に落ちたら、
否、あれは岩盤を食い荒らすテラフォーミング専用のナノマシーンの群れだ。
あんなものの中に落ちたら、いや、触れるだけで俺の体は原子レベルでバラバラにされてしまう。

だが、ARで投影されたMOBや蛮神からリアルな攻撃など食らう訳が無い。
海辺の岸壁で釣りをしている時に突風にさらわれることだけ気を付けておけば大丈夫なのだ。

そんな中途半端な日常に飽きてフロントラインに来たのだが
未だに周囲の冒険者にいつも先を越され獲物にありつけないありさまだ。

今のところはここはとても安全だ。
だが、貰った前金ももう残り少ない
後数日でハイデリンに戻るしかないだろう。

何も得るも無く引き返すのは癪だが
全てを失うよりはいいかもしれない。

口数の多かったお調子者も同じ思いだったのか?
俺に頭のエーテル干渉計を投げてよこしやがった。

眼の隅で飛んでくるエーテル干渉計を見つつ左手で受け取ると
それはずっしりと重く左肩がズズっと下がる。

馬鹿な奴だ。
自分の頭も一緒に投げる奴があるか。

お前は本当にお調子者だったな・・・

後ろに振りかぶったレイピアをそのまま左後方へ突き出す。
その切っ先にエーテルのパワーを集中させ俺の心臓を突き刺そうとするパワーを二つにへし折った。

さて、次はどうしようか?

お調子者ともう一人のDPSはもう動けない。
デットエンド。

このパーティーの生き残りは
俺とタンクとヒーラーだけかな。

黒い馬に乗った無表情のデカい奴を相手にするには力不足だが、
何すぐに応援が来る。

どっちかと云えば応援にやってくる奴らの方が表情が豊かで怖いくらいだ。

さぁ
俺たちの狩りの始まりだ。

俺たちの・・・




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