【ギラバニアの貴公子Ⅱ】胎動

高々度哨戒軌道から観る異星は深黒のボールの様だ。
豊かな森林も砂漠も海も無く変化に乏しい。
動くものと云えば熱源から立ち昇る水蒸気が作り出す高層の薄い雲の流れだけだ。

異星の星系は3連星で
この星は第3伴星を周回しており、
地表の凹凸に影がいくつもできる日もあれば、
影が相殺され立体感に乏しい日もある。

今は第3伴星が作る夜を主星の強い光がかき消している。

それなのにこの星は深黒なのだ。

ハイデリンと繋がるゲート付近を除く大半が
まだテラフォーミングの真っ最中。
地表に広がるナノマシンの群体が恒星の光りを貪欲に吸収し
星を作り変えるエネルギー源にしているのだ。

だが、ナノマシンの群れは星を作り変えるだけではない。
厄介な敵も生み出している。

ハイデリンではARとしてHUDに投影されるMOBが
ここでは実在する物質をまとって存在する。

しっかりとした実体があるので、MOBに剣や槍で攻撃しようものなら、
どんなにILが高い武器ても数匹と対峙すれば壊れてしまう。
本当に壊れてしまうのでGilでその場で修理という訳にもいかず
大軍を投入してもヒットアンドウェイで前線と補給路を移動しつづけるしかないのだ。

現在はガレマール帝国の航空宇宙軍と地上機甲師団が主力であり、
徹底した絨毯爆撃と砲撃の後で地上の傭兵たちが資源調査を行っている。
それでも、わずかではあるが実体のあるMOBが出没する。

傭兵たちからのMOB出現の報告を受け高高度からのレーザー砲撃を行う。
しかし、傭兵たちのHUDには剣や槍を手にした冒険者の手によって
MOBが討ち取られたとログに表示される。

そんな状況が続いていたが、ナノマシンの群れが地下深く溜まり場を作り
そこから高いエネルギー反応が検出され始めた。

おそらく巨大なMOB(蛮神)を生み出そうとしているのだろうというのが技術部の推測だ。

高高度からのレーザー照射で溜まり場を探索することで
少しづつ生み出されようとしているものの姿が判ってきた。
不思議なことに故事に描写のある巨大な怪物に似ているものが多いのだ。

それは何を意味するのか?

まだ、この星については判らないことが多すぎだ。
そしてとてつもなく危険な星なのだ。

レーザー照射に強い反応。
何かが高速で地上から空中へ飛び出したようだ。
それはこちらからは動いていないように見える。

つまり、
こっちに真っすぐ突っ込んできている訳だ。

後席のナビゲーターがカウントダウンを開始。
5、4、
それに合わせてゆっくりとエンジンのスロットルをあげる。
エンジンにエネルギーを送りこむポンプの出力をMAXへ。

2,1、ボード。左。

右エンジンのスロットルをMAXに叩き込み、
10Gの高加速で旋回。

続けで左エンジンのスロットルもMAX。
全力航行。

接近する飛翔体と90度の角度で交差。

すぐにレーザーガンで近接射撃を開始。
飛翔体の左半分の表層面が爆発で吹き飛ぶ。

続けて右半分も強烈なX線を放射して爆発した。

安全圏へ退避し、スロットを戻した後、

さてはて、今のは

地上の傭兵たちのHUDには
どんな風に映っていたのだろうか?

巨大な竜巻?
昇竜?

それとも・・・




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