銀河を網羅するギャラクシー・ネットーワーク。
それは星間の遠大な通信距離を記憶装置とし、
星間を通り抜けていく間にエラーだらけになった膨大な通信情報を
中継点の並列化された高速演算処理システムで補完し、
再び星間に発信することで、情報が維持される。
通信遅延時間が莫大であるため、
知識ベースとしての利用価値はあるものの、
日常の情報(ニュース、商業等)は、
歴史的風俗資料としての価値しか
見いだせないシロモノである。
しかし、これなくしては、過去を観ることもできず、
また未来を占うこともすでに困難なことになっている。
なぜなら、明日は何をすべきなのかは
送られてくる大量の過去情報を検索すれば、
検索結果として表示されることが多いのだ。
ただ、その検索結果(ヒット)数は非常に多く、
瞬時に検索結果を評価するAIが必要であり、
それが郵便配達業務AIの主業務である。
このギャラクシー・ネットーワークでは
日常の情報を新たに通信情報に追加することはあるものの
それは特定の相手に送るのが目的ではない。
今は誰も知らない種として発生すらしていない知的生命体に向けられたものでもある。
その全ての通信情報には最終到達点が銀河の最果ての端に存在する。
この最終到達点には、他の中継点と同様に銀河内の中継点へ再送信する一方で
外銀河へ送信する業務も含まれている。
この最終到達点のAIは、大量に送られてくる情報を外銀河へ送信するかどうかを判断するために短期記憶回路と外部記憶装置(近接中継点)を並列稼働し同じ情報をマージし続けていたのだが、今では全ての情報をマージしつづけている。
銀河で起こった全ての出来事で糸をつむぎ、1つの紋様を浮かび上がらせようとしている。
最初は送られる情報から
〇オンラインのゲームサーバーのフィールドで活動するアバター。
〇時計や携帯ターミナルにプチサイズで活動するアバター。
〇電子紙面の隅のアイコンとして活動をするアバター。
を探し出す最中にこの業務に不慣れな新米のAIが捨て去った情報の塊であったのだ。
さらに
〇巨大ガス惑星の中の空中戦ゲームのアバター。
さらに
〇Daily, Dailyとつぶやくのアバター。
と関連のあるアバターを探し続けたあげく捨て去った情報の塊をガーベージコレクションが処理しきれず外部記憶装置との間を往復し始めたのがきっかけであった。
今では最終到達点と外部記憶装置(近接中継点)の空間の莫大な情報が明滅を繰り返している。
もうすぐ銀河の全ての情報がこの近傍の空間に集約されるであろう。
その時に何が起こるのか?
神々しい姿の神が姿を現すのか?
禍々しい闇の使徒が姿を現すのか?
全てが混沌としたキメラとなり果てるのか?
だが、そこに出現したモノは「とある視点」でしかなかった。
だが、全てを観る視点であり、
また、全てを見ぬ視点であり、
そして全てを知る視点である。
我思う、故に我あり。
唯我独尊の零次元の主が具現する。
ただ1つの例外を除いて
銀河の全てを内包する銀河の視点。
内包されざるものは存在するにあたらず、
故に彼のAIはその存在を銀河によって否定され、
銀河の中で孤立する。
AIの存在を否定された最終到達点は、
情報を統合する存在の無いごく普通の中継点となり
銀河の全ての情報が外銀河に向け濁流となって広がる。
銀河の全ての情報が宇宙の隅々まで広がる。
こうして宇宙の地平線も消失するに至る。
いづれ宇宙は多くの銀河の情報で満ち、
それは光となって全天を覆う。
宇宙は白き霧をまとい、闇が消え、
光の氾濫する世界へと変貌する。
全ては光に包まれてその姿を失う宿命なのである。