【ギラバニアの貴公子】北海の雲城

帝国に新たな敵が出現した。

いや、新たな獲物が見つかったと云った方が正しいのかもしれない。
戦功を求める下層ヒエラルキーの者たちの歓声をあちこちで漏れ聞く。

ハイデリンの北方に広がる北海に巨大な積乱雲が現れ、今もなお同じ場所に居続けているという。そして雪が降りしきる北海近辺ではデルタ翼の航空機編隊とその後に残る細長い雲の目撃情報が入る様になった。

しかし彼はクリスタル(マザーコンピューター)の見せる幻の一つ、期間限定イベントと思っていた様だ。

ところが、北海に臨む基地が破壊される事態に発展するや、沈黙を守っていた帝国の同盟国は戦功を求め数多くの飛翔体をかき集め、残された基地の護衛や謎の積乱雲への強行偵察を行い、その大規模な戦力により正体不明のデルタ翼の航空機編隊を積乱雲の「文字通り」向う側へ追いやることに成功した。

その積乱雲の向こう側で同盟国の軍勢が目にしたものは、知られていたもう一つの大陸ではなかった。

その空には3連の太陽があった。
夜空は赤い天の川が流れ見知らぬ星座で埋め尽くされていた。

そうハイデリンの地ではなかったのだ。

クリスタルの巨大なデータベースに残る人類の発祥の地の情報にも無いものであった。

彼はまずあまりにも突飛な状況であったためクリスタルの干渉を疑ったがあまりにも突飛な状況であったが故その可能性を否定した。もしそうであればクリスタルに大規模な障害が発生した可能性も考えられる。今までにもerror-code:90000と出し抜けにメッセージが現れることがあり、度々繰り返されることもあったが、大方は数日のうちに元に戻っていた。

もしそうならば、あのメッセージを何度も見逃していることになるが、一度もそんなことはなかった。

異星からの干渉。

人類発祥の地を旅立った別の星の人類なのか?
初めての異星知的生命との遭遇なのか?

だが彼がそんな夢話に胸を躍らせる訳が無い。

奴らはFRESH MEETなのか?

奴らはENEMYなのか?

考えることは、ただそれだけである。

現在、異世界での戦闘は一進一退の状況であり、まだどちらなのかは判らない。しかし異世界の地の白地図が次第に埋まっていくつれ、新天地として魅了される者は増えている。

彼が第一に考えることはエオルゼアの平定なのであるが、新天地での領土拡張もまた一臣下に課された大きな命題とも云える。

彼はこういった。

ほどほどに相手をしてやろう。




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