この機体のおおよその感覚器は上部前面に集中している。
これでは感覚器の真上に宝の地図が載っていても一生気が付かないだろう。
だが、通りすがりの機体のエンブレムを見つけるためには最適な構成なのだ。
感覚器越しに観たエンブレムがいつものと同じパターンと認識した途端に飽きてしまい、
また別の機体を探しはじめる。
見知らぬエンブレムを見れば、何か怪しげなものを感じるだろう。
エンブレムの辞書で照合する・・・アンノウン。
これは敵だ。
だが、そう判断した機体の多くは長く存在できない。
なぜなら、自機と比較し、より強固で、より高性能な機体は数多く存在するからだ。
このワールドはそんな敵でひしめき合っているのだ。
それとも、対等な相手への攻撃による勝利か敗北か
それとも、下等な相手へ攻撃し勝利し収穫を得るか
・・・
いつかは自機よりも強固な機体に敗北するだろう。
しかし、そんな敵に相見える前に寿命が尽きる機体も多いと聞く、
それが幸運なのか不運なのかは判断されていない。
あれは敵か味方か。
この機体の思考回路は、過去に余りにもスケールが異なる機体と遭遇、恐慌状態に陥り先制攻撃を仕掛けたことがあった。明らかに無謀な行動であった。しかし、攻撃を仕掛けても全く勝ち目が無いどころか、自機の存在も行動すらも余りにもスケールが異なる機体に認識されなかった。
その様にして思考回路は無謀な攻撃の結果として失敗と挫折を味わった。
それは神なのか?
神とは何であったか?
そう思考する回路は遥か彼方に新たな機体とそのエンブレムを発見。
エンブレムの辞書で照合。否、照合の必要はなかった。
思考回路に残るエンブレムと一致。
機体は再び神と遭遇した。
回避しようとする思考と凝視しようとする思考が交錯した機体はそのまま直進。
長い時間が経過した後、何事も起きず、すれ違うのであった。
それは機体が祈りを捧げる最初の姿であった。