俗称はマザー・クリスタル。
その実態はハイデリンの周回軌道を回る宇宙移民船にある
巨大な光学コンピュータのクラウド・システムである。
※機械式は構造上低速演算で部品の消耗も激しく半導体回路の電流ループによる情報伝達もゲートの適温範囲(おおよそ-20℃~60℃)でしか稼働できず電流ループに伴う回路パターンの変形や漏れ電流に伴うパターンの突起成長によるショートも避けがたくメンテンスフリーでの長期間運用にはより強固な保護層が必要で回路の実装密度は著しく低下する。これに対して光学式は消耗も少なく稼働温度範囲の制約も少なく情報は回路パターンとの光子の光学干渉によって伝達され回路への変形の影響も少なく長期間の運用に適しているが外部とのリンクは専用の情報素子に限られディスプレイ装置等への高速で大容量の情報転送や受信も困難であるため航行上の情報は大量の情報素子とのリンクによって取得される。また宇宙移民船の移民に対しては大脳を網状情報素子で覆い生体活動のモニタリングを行っており解凍・蘇生治療も移植したこの情報素子によって行われる。またこれを応用し映像や音声を記憶のシンボル情報として送受信することも可能である。
冷凍睡眠状態の沢山の移民が長期間滞在する宇宙移民船の中枢システム。
クラウドとは云え、単独で長い航行の運行、移民の生命維持管理、その他諸々を取り仕切る万能管理コンピュータ群なのである。
そして移民に最適な惑星にたどり着くと、
暫くは惑星のテラフォーミングに明け暮れる長い長い日々。
その後に冷凍睡眠から目覚めた移民たちが星に降り立つ。
冷凍睡眠の後遺症から移民たちの記憶は曖昧になっている。
そこへ新しい星の歴史が語られる。
その偽りの歴史に沿って、人々は新しい星での生活を始める。
何千年と続く偽りの王国を守るために・・・
それはまるでテーマパークに長期休暇に来たかの様だ。
人々は夢心地の生活に入り浸る。
やがてその偽りの歴史と人々の生活活動が融合したことを見届けた後、
偽りの歴史を広めたクリスタルと名乗る光学コンピューターは活動を停止する。
いつまでも偽りの歴史を語っていては押し付けられた歴史と認識されてしまうからだ。
光学コンピューター、すなわちクリスタルの声を聴く力、時を超える力も
光学コンピューターと有機分子情報素子(LS)の情報収集能力とその記憶を保持する巨大なストレージにアクセスできるからこそ得た力なのだ。
その力も光学コンピューター、すなわちクリスタルの停止と共に永久に失われる。
ギラバニアの大規模内戦の中で覚醒した彼がその能力に依り観たものは凄まじい心の葛藤であった。
そして、ついに調停者の元で、ハイデリンでの新たな歴史が始まる。
全てはありのままに・・・
それは残酷で残忍で耐え難い。
クリスタルと接続し記憶を常時同期することで
生体が破壊されても予備の生体に記憶を移し復活する不死の存在
それは天使いだけでない。暁の同盟の諸子も冒険者もまた同じなのである。
それは生命体と云えるのか?
クリスタルの末端装置でしかないのか?
が、それもクリスタルの消失によって全て失われる。
そしてハイデリンの真の歴史が始まるのである。